少しずつ、前へ
インド、ムンバイへ行ってきました。売春地帯の子どもたちのことを書きたいのですが、言葉にすると軽薄に感じられ、うまく伝えられません。
感情を上手に表わせず暴れる子がいます。母親も、上手に愛情を表すことが出来ないのかもしれません。抱きしめることしか出来ませんでした。涙が止まらず困りました。
隣の子の喉を片手で絞める子もいます。3歳です。日常に見慣れた光景なのでしょう。急所を突いたしぐさに声が出ません。「もう長くないでしょう」という、エイズに罹っている母親に連れられて帰る子の、その後姿のなんと細いことか。売られてきた母親は自分の年齢を知りません。
そのエリヤに暮らす子どもが描いた絵があります。共通して描かれているものは、数箇所にゴミの山、数匹のネズミ、垂れ流しの汚水、駄菓子屋、階段、誰かが寝ているベット・・・。
昨年、幼稚園で見かけた子どもたちに路上で会いました。手を差し出し、その手を口に持っていきます。「何か食べ物をくれ」というしぐさです。私と見止めると笑顔を返してくれました。昨年は階段の手すりにもたれてうつろな表情をしていた子でした。「路上で、勉強していたよ」と同行した人が教えてくれました。
少しずつ、少しずつ、前に向かって進んでいる。そう思いたいのです。