震える手で、私のノートの裏に「舒文堂」と書きました。そして震える声で「舒文堂へ行って 並ぶ古い書籍達から学びなさい」と、父は言いました。病院のベットの中でした。
父の日が近くなると思いだします。「からゆきさんを勉強する」と言った私に父が遺した言葉でした。
教えに従い、舒文堂へ足繁く通った時期がありました。そして、大正時代や昭和初期に出版された天草関係の文学書や歴史書、天草更紗の布張りの「天草写真大観」等、舒文堂河島書店から私の本棚へと移ってきました。
私の女性史の研究は、舒文堂で 高群逸江著「女性の歴史」など彼女の全集に出会えた事で、深みと広がりと、確かさを自分なりの結論へ近づけたと自負しています。
父の遺言であった 自分の足で歩き、自分の目で見て五感を磨ぎ澄まし大地に吹く風を感じるように、そのように生きています。
今年、息子が良い伴侶を得て初めての父の日を迎えます。父から私へ、そして息子へ その命が孫へと繋がっています。ありがたいと思います。
今年は、父の17回忌です。